― なぜ合理的な判断が先送りされるのか ―

不動産業界では、今なおオンプレミスやRDPを前提とした基幹システムを長年にわたり使い続けている企業が少なくありません。
多くの場合、それは「間違った判断」の結果ではありません。むしろ当時としては、合理的で、現実的な選択だったケースがほとんどです。
しかし環境が変わった現在、過去の合理性が、現在の経営判断を曇らせている
――そうした状況も増えています。
本記事では、オンプレ継続企業が典型的に陥りやすい「つまずきの構造」を、経営視点で整理します。
つまずき①「今、動いているから問題ない」という判断停止
最も多いのが、この状態ではないでしょうか。
- 日常業務は回っている
- 大きな障害は起きていない
- 現場から強い不満も出ていない
結果として、「今はまだ判断しなくていい」という空気が生まれます。
しかし経営判断として重要なのは、「今動いているか」ではなく、「止まった時に、経営として制御できるか」 です。
オンプレミス環境では、障害や攻撃が起きた瞬間に、判断材料が一気に不足するケースが少なくありません。
つまずき② 属人化を“安定”と誤認してしまう
オンプレ環境では、
- 長年担当している社員がいる
- 外部ベンダーとの関係も安定している
という理由で、「問題なく運用できている」 と認識されがちです。
しかし経営視点では、それは安定ではなく 依存 です。
- その担当者が不在になったらどうなるか
- 判断・復旧・説明を誰が担うのか
この問いに即答できない状態は、すでにリスクが顕在化している と言えます。
つまずき③ セキュリティを「対策の有無」で判断してしまう
「ウイルス対策ソフトは入れている」「ファイアウォールも設定している」
これは技術的には正しくても、経営判断としては不十分ではないでしょうか。
重要なのは、
- 誰が
- どの情報に
- どのようにアクセスでき
- それを説明できるか
という 統治(ガバナンス)の視点 です。
RDP運用は便利な反面、アクセス権限やログ管理が経営から見えにくい構造になりやすいです。
つまずき④ 「切替コスト」だけを見てしまう
SaaS移行を検討する際、最初に話題になるのはコストではないでしょうか。
- 初期費用
- 月額利用料
- 移行工数
しかし、ここで見落とされがちなのが「継続コスト」と「潜在コスト」 です。
- 障害対応にかかる人的コスト
- 保守・更新のたびに発生する調整
- トラブル時の経営判断コスト
これらはPLに直接表れにくいため、意思決定の俎上に乗りません。
結果として、安く見える選択を、高く維持し続けるという状態に陥ります。
つまずき⑤ BCPが“書類上の整備”で止まっている
BCP(事業継続計画)を策定していても、
- 実際に使ったことがない
- システム面の検証が不十分
というケースは少なくありません。オンプレ環境では、
- 拠点
- 電源
- 回線
- 機器
といった物理要素への依存が残ります。
「在宅でも業務は可能」という前提が、本当にシステムとして実装されているかここが分水嶺になります。
つまずき⑥ 将来のガバナンス要求を過小評価する
現時点では問題なくても、
- 金融機関との取引
- 投資家対応
- グループ再編
- M&A
といった局面で、システムの説明責任が一気に問われることがあります。
その際に、
- なぜこの構成なのか
- どこまで把握できているのか
を説明できないと、事業そのものの評価に影響します。これはIT部門の問題ではなく、経営課題です。
つまずき⑦ 「変えないこと」がリスクになる局面を見逃す
オンプレ継続は、これまで“無難な選択”でした。
しかし現在は、
- 攻撃手法の高度化
- 人材の流動化
- 働き方の変化
により、「変えないこと自体がリスク」 になる局面に入っています。
変化を先送りすることで、選択肢が狭まり、結果として 高いコストでの切替を強いられるケースも見られます。
問題は「オンプレかSaaSか」ではない

重要なのは、オンプレミスか、SaaSか、という二択ではありません。
- 経営としてリスクを把握できているか
- 説明責任を果たせる状態か
- 将来の自由度を確保できているか
という問いに、現在の基幹システムが答えられるかです。
いい生活の不動産SaaSは、この問いに対し、
- 業務継続
- セキュリティ成熟度
- ガバナンス対応
を含めて検討できる現実的な選択肢を提供しています。
切替は、「今の否定」ではなくこれからの経営判断のための整理と言えるのではないでしょうか。