
賃貸管理業務は、契約内容の管理から物件の修繕対応、家賃の入出金処理、入居者やオーナーとのやりとりまで、多岐にわたります。これらをすべて人の手で対応するのは非効率であり、ミスや対応漏れの原因にもなりかねません。そこで活用したいのが「賃貸管理システム」です。近年では、クラウド型やオールインワン型などさまざまなタイプが登場しており、自社の業務内容に応じた最適なツールを導入することで、作業の自動化や効率化を図ることができます。
そこで今回は、賃貸管理システムの主な機能や選定時のチェックポイントを整理したうえで、目的別におすすめできる製品5選を紹介します。比較検討の材料として、ぜひ参考にしてみてください。
賃貸管理システムの主な機能

賃貸管理システムは、契約や物件、家賃の入出金、変動費の請求など、さまざまな賃貸管理業務の効率化をサポートします。ここでは、こうした効率化を支える賃貸管理システムの主な機能について紹介します。
契約管理機能
賃貸業務では、契約情報がバラバラに管理されていると、確認や対応に時間がかかってしまいます。そんなときに役立つのが「契約管理機能」です。
物件名やオーナー名、契約者の基本情報を登録しておけば、契約書や重要事項説明書といった関連書類と紐付けて、一元管理することができます。登録した情報をもとに、書類を自動作成できる機能があるのもポイントです。
さらに、過去の契約内容と現在の契約を照らし合わせて差分を確認したり、電子契約に対応したシステムなら、オンライン上での契約締結や書類のやりとりも可能になったりします。
物件管理機能
物件管理機能では、修繕や点検、クレーム対応といった物件ごとの履歴を、システム上でまとめて管理できます。
過去の対応内容を確認できるのはもちろん、見積書や対応前後の写真なども保存できるため、物件ごとの状況を正確に把握しやすくなります。
さらに、物件の基本情報だけでなく、間取り図や外観・室内の写真なども一緒に登録しておけるのもポイント。履歴は時系列で記録されるので、「どの物件に、いつ何をしたか」がひと目でわかり、対応漏れの防止にも役立ちます。
また、賃貸管理システムによっては、登録した物件情報をそのまま契約書の作成や入居者募集などに活用できるものもあります。
入出金管理機能
入出金管理機能は、家賃の入金状況を確認したり、未入金の方への対応を行ったりといった業務を、まとめて行える便利な機能です。
「誰からの入金が済んでいないのか?」「消込作業はどこまで進んでいるか?」といった情報を、システム上でリアルタイムに把握できるため、滞納対応のスピードも上がります。
また、滞納の有無や期間を自動で通知してくれる機能もあり、督促が必要な入居者をすぐに特定できます。さらに、督促データをまとめて作成したり、督促状を一括で出力したりすることも可能で、手作業の手間やミスも減らせます。
問い合わせ管理機能
入居者やオーナーからの「問い合わせ」を1つの画面でまとめて確認できるのが、問い合わせ管理機能です。例えば、「水漏れ修理をお願いしたい」「退去時の原状回復はどうなるの?」といった連絡内容に対して、どのような対応をしてきたか、その履歴も時系列で記録されていきます。
また、やりとりの重要度に応じて対応ステータスを設定できるため、「対応が遅れてしまった」「伝え忘れていた」といったミスを防ぎやすくなるのも大きなポイント。社内での進捗共有もスムーズになり、チーム全体で連携しやすくなります。
さらに、複数の不動産ポータルから来る問い合わせも、まとめて一元管理が可能です。提案中の物件一覧もすぐに確認できるため、対応スピードも格段に上がります。
追客を自動化する機能も搭載されており、「この条件に合う物件はありますか?」というリクエストに自動でマッチング・配信される機能があることも魅力です。
その他機能
賃貸管理システムの中には、物件に関わるすべての関係者情報を一括で管理できる「関係者管理機能」を備えたものもあります。入居者やオーナーだけでなく、仲介会社・保証人・施工会社・担当者など、多様な関係者情報をまとめて登録可能です。
契約情報と連動するタイプであれば、契約内容の入力と同時に関係者情報も自動反映されます。これにより、入力作業の手間を省きつつ、記載ミスや入力漏れの防止にもつながります。
関係者の情報を一元的に管理できることで、必要なときに迅速な情報共有や確認が可能になり、業務効率の向上に貢献するでしょう。
賃貸管理システムの選び方

賃貸管理システムの選定にあたっては、自社の業務内容や課題を整理し、必要な機能や運用条件を明確にすることが欠かせません。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
自社業務に必要な機能がそろっているか
不動産管理システムを選ぶうえで、まず確認したいのが「自社の業務に必要な機能がそろっているか」です。不動産管理システムには、入居者管理・広告作成・契約更新・入金確認など、多様な機能が備わっています。ただし、搭載されているすべての機能が、自社の業務に直結するとは限りません。
例えば、賃貸を中心に取り扱う企業では、入居者情報や家賃の請求・入金管理機能が欠かせません。一方、売買をメインに行う企業では、契約書の電子化や取引情報の管理・分析機能が重要になる場合があります。
導入を検討する際は、まず自社の業務内容や課題を整理し、優先順位をはっきりさせましょう。
操作性・使いやすさ
どれほど多機能でも、操作が複雑すぎると現場では十分に活用されない可能性があります。導入効果を引き出すためには、画面構成や操作方法が直感的でわかりやすいことが大切です。
例えば、ボタンやメニューの配置が整理されていて迷わず操作できる、画面切り替えがスムーズに行えるといった点は重要です。多くのシステムでは、導入前にデモや無料トライアルが用意されているため、実際に触ってみて現場での使い勝手を確かめておくと安心でしょう。
ローカル型かクラウド型か
賃貸管理システムを選ぶ際は、ローカル型とクラウド型それぞれの特長と弱点を理解したうえで、自社に最適な方式を見極めることも大切です。ローカル型は自社サーバーで運用するため、データが社内に保管される安心感があります。加えて、業務フローに合わせた細かなカスタマイズも可能です。一方で、初期費用が高額になりやすく、保守やアップデートの手間も自社負担となります。
クラウド型は比較的低コストで導入でき、インターネット環境があれば外出先や在宅勤務でも利用可能です。さらに、アップデートが自動で行われるため、運用や管理の負担が軽減されます。ただし、ネットワーク環境への依存度が高い点には注意が必要です。
連携可能なサイト・システムを確認する
賃貸管理システムを選ぶときは、API連携に対応しているかもチェックしましょう。APIとは、異なるシステム同士が自動でデータをやりとりできる仕組みのことです。
API連携が可能であれば、他システムとの接続がスムーズになり、自社の業務フローに合わせたカスタマイズもしやすくなります。例えば、会計ソフトや銀行、保証会社とデータをつなぐことで、入力作業の手間やミスを減らすことが可能です。
さらに、情報を一元管理できるようになれば、確認や共有にかかる時間も短縮できます。
仲介業務への対応
賃貸管理システムの中には、管理業務だけでなく仲介業務をサポートする機能を備えたタイプもあります。代表的なのは、以下のような機能です。
- 不動産ポータルサイトへの物件情報自動連動機能
- 入居希望者からの問い合わせを一元管理する機能
- 内見予約やスケジュールを管理できる機能
これらの機能があれば、仲介業務の流れがスムーズになり、対応漏れの防止や成約率アップにもつながります。
機能改善・アップデートの頻度
賃貸管理システムを選ぶ際は、機能改善やアップデートの頻度も重要なチェックポイントです。更新の頻度だけでなく、ユーザーからの要望や市場の変化をどのように反映しているかも確認しておきましょう。
不動産業界は法改正や制度変更が頻繁に行われるため、システムがそれらに対応できないと、現場で手作業による補完が必要になります。その結果、業務負担が増え、効率低下を招くおそれがあります。
賃貸管理システムは長期利用を前提とするツールです。だからこそ、変化に柔軟に対応でき、常に最新の状態で使えるシステムを選ぶことが、安心して運用を続けるためのポイントです。
サポート体制が整っているか
ツールを導入したあとも安心して使い続けるためには、サポート体制が整っていることが重要です。特に、業務品質の向上に直結するシステムだからこそ、導入時の初期設定支援やオンボーディングは欠かせません。
運用中にトラブルや疑問が発生した場合、迅速かつ丁寧に対応してくれる窓口があるかどうかも確認しておきましょう。サポートの提供時間や問い合わせ方法(電話・メール・チャットなど)、対応のスピードなども事前に把握しておくことがポイントです。
また、ITに詳しくないスタッフが多い現場では、サポート品質の高さが業務全体の安定運用につながります。導入前に、サポート体制の内容や評判をチェックし、安心して運用できる環境を整えておきましょう。
賃貸管理システムおすすめ5選

不動産管理業務の効率化や品質向上を目指すうえで、賃貸管理ソフトの活用は欠かせません。ここでは、クラウド型からオールインワン型まで、特長の異なる5つの不動産管理ソフトを紹介します。
①『いい生活賃貸管理クラウド』(株式会社いい生活)
『いい生活賃貸管理クラウド』は、株式会社いい生活が提供する、不動産管理会社向けのクラウド型賃貸管理システムです。
物件管理や入居者・オーナー情報の管理、契約・入出金・修繕管理など、賃貸管理に欠かせない主要業務を幅広くカバー。さらに、電子契約やサブリース送金、他システムとの連携機能も備えています。
複数の担当者が同時に利用できるため、情報共有や進行管理がスムーズになり、属人化の防止にも効果的です。操作画面は直感的で、必要な機能にすぐアクセスできる構成。初期設定や研修、マニュアル、問い合わせ対応など、土日祝日も稼働するサポート体制が整っており、IT操作に不慣れなスタッフが多い現場でも安心して導入できます。
法改正や制度変更があった場合はベンダー側で自動アップデートが行われ、常に最新の法令に準拠した運用が可能です。銀行や住所などのマスターデータも自動で更新されるため、日々の業務負担軽減にもつながります。
②いえらぶCLOUD(株式会社いえらぶGROUP)
いえらぶCLOUDは、賃貸・売買・管理まで幅広く対応できるオールインワン型の不動産業務支援システムです。物件登録や広告作成、顧客管理、契約・更新・解約、入出金管理など、日々の業務をまとめて管理できます。さらに、HP制作やポータル連動、チラシ編集、間取り図作成、広告表示チェック、電子契約など、多彩な機能がそろっているのも特長です。
多機能でありながら操作は直感的で、物件登録やチラシ作成の時間短縮にもつながります。入出金管理では、ファームバンキングによる振込の自動化や、収支報告書のワンクリック作成も可能。これにより、事務作業の負担を軽減し、効率化を後押しします。
導入後は、専門スタッフによる定期的なコンサルティングやトラブル対応を受けられるなど、安心して使い続けられるサポート体制が整っています。
参考:いえらぶCLOUD公式ホームページ
③ITANDI管理クラウド(イタンジ株式会社)
賃貸管理業務を幅広く手がける不動産会社にとって、「物件管理から入出金管理まで一元化したい」というニーズは少なくありません。
ITANDI管理クラウドは、イタンジ株式会社が提供するクラウド型賃貸管理システムで、物件・入居者・修繕・精算といった業務をまとめて効率化します。入出金や未収金の管理を一元化でき、ファームバンキングやネットバンキングを活用した入金消込の自動化にも対応しています。
さらに、物件募集や内見受付、電子契約などをカバーする同社の各種サービスとシームレスに連携可能。RPA技術によって基幹システムと業者間サイトの情報を自動で同期し、物件情報をリアルタイムに更新します。これにより、営業時間外でも内見予約や問い合わせ対応が可能となり、顧客の利便性向上にもつながります。
参考:ITANDI管理クラウド公式ホームページ
④賃貸革命11 (クラウド対応)(日本情報クリエイト株式会社)
賃貸革命11は、日本情報クリエイト株式会社が提供する賃貸管理システムです。物件管理・契約管理・家賃管理など、賃貸運営に必要な情報を一元的に管理できます。柔軟な管理形態や送金方法に対応できるため、自社の成長や運営方針に合わせてシステム環境を構築可能です。
操作画面は直感的でわかりやすく、初心者でもスムーズに習得しやすい点が特長です。部署間での情報共有がしやすくなり、属人化によるミスや業務ロスの軽減にもつながります。ただし、一部の機能は有料オプションとなるため、導入前に必要機能とコストをしっかり確認しておくことが重要です。
参考:賃貸革命11公式ホームページ
⑤賃貸管理システム(アットホーム株式会社)
アットホーム株式会社が提供する「賃貸管理システム」は、高セキュリティ設計のクラウド型システムです。パソコンの故障や災害時にもデータが保護されるため、安心して長期運用できます。
利用プランは事業規模や予算に合わせて3種類から選択可能です。
- 台帳プラン:物件や入居者の基本情報を管理できるシンプル機能
- 契約管理プラン:契約・更新・解約などの手続きをシステム化
- 家賃管理プラン:入出金管理やオーナー精算まで対応するフル機能版
主な機能は契約情報の登録・更新・解約処理、オーナー精算などで、基本的な管理業務を幅広くカバーします。特長的なのは、登録した空室情報をATBB(アットホーム加盟店専用の物件情報流通プラットフォーム)と連携できる点です。募集条件の変更や更新もシステム上で完結できるため、物件情報の鮮度を保ちながら業務効率化を実現できます。
参考:賃貸管理システム公式ホームページ
賃貸管理システムを比較検討し、業務効率化を実現

賃貸管理システムは、契約・物件・入出金管理などの幅広い業務を効率化し、ミスや対応漏れを防ぐためのツールです。導入にあたっては、自社の業務内容や課題を整理し、必要な機能や運用条件を明確にすることが重要です。操作性や使いやすさ、ローカル型かクラウド型かの選択、他システムとの連携性、仲介業務への対応、機能改善やアップデートの頻度、そして充実したサポート体制の有無も重要な判断材料となります。
本記事では、これらの選定ポイントとともに、特長の異なるおすすめの賃貸管理システム5選を紹介しました。各システムの機能やサポート内容を比較し、自社の業務フローに最適なツールを導入することで、日々の作業を効率化し、サービス品質を向上させていきましょう。